「・・・落ち着いた?」 首にしっかと巻きついている腕を解き、久しぶりに見たの暗く沈みきった表情を無理矢理上げさせると触れるだけのキスを落とす。 「カカシ・・・?」 一生懸命に涙をこらえるに優しく笑いかけ、何も言わずに額に、瞼に、頬に・・・いくつもキスを落としていく。 はそれに対し何も言わず、ただカカシのしたいようにやらせていた。 ― 慰めて・・・くれてるのだろうか? それにしたって、言葉を話せない猫や犬のような慰め方。 もしかしたら不安定なカカシの心に負荷をかけてしまったかもしれないと感じないでもなかった。 ― このままいくと・・・ヤバイよね・・・ 文化祭。 場所は保健室。 いつものようにサボってる輩はどこにも居ない。 放っておくのもいいが、不信感を持った人物は少なからず増えたわけでカカシをこれ以上好き勝手させるわけにもいかなかった。 すでにもう、顔は首下に埋まってるし・・・ すでにもう、手はよからぬ場所へと移動してるし・・・ 「カカシ〜・・・何も言わないからってやりすぎっ!!」 はカカシの髪を引っ張り無理矢理に離す。 「痛っ・・・〜・・放して・・・」 「その前に手を退けなさい」 「・・・・」 「退けろ」 渋々、といった感じだが、カカシは手を退けるとフッと優しい笑みを浮かべての頭をポンポンと叩く。 「何よ・・・不気味な笑み浮かべてないでよね・・・」 「ハイハイ。・・・で、・・・何もされてないよね?」 「逃げたからね」 先程までの自分は聞ける状態じゃなかったんだろうなぁ。と自分でも分かる。 きっと言葉で何を言っても通用しないからああやって気を紛らすというか、慰めると言うか・・・ただ単にチャンスをモノにしようとしてただけかもしれないが、そうゆう手段を取ってくれた事が嬉しい。 「そう・・・」 「・・・ハヤテ先生・・・大丈夫かなぁ〜・・・」 はチラッとカカシを盗み見るような形で聞く。 どうやらカカシはの言葉を疑う事無く、いつものカカシで居てくれているようだった。 「ま、大丈夫でしょ。送るっつったって校門までだし・・・」 「・・・そう、かなぁ?」 「・・・ほら・・・来たみたいだよ?ハヤテ・・・」 そう言って保健室の扉を指す。 確かに、誰かがこちらへ向かってくる足音が聞こえる。 その足音は、カカシの言う通りハヤテだったらしく、保健室前で止まると2,3度ノックして顔を覗かせた。 「大丈夫ですか?さん・・・。」 「ん〜・・・ハヤテ先生は?」 「・・・・・大丈夫ですよ」 ハヤテはポンポンッとの頭を優しく叩きカカシへと目線を向ける。 カカシはそれに溜息を吐きを呼ぶ。 「とにかく今日は帰りなさい。送ったげるから。」 「嫌!!一人になりたくないっ!!」 即答であった。 カカシはもう一度溜息を吐くと「じゃあ、教室で待ってなさい」と言って促した。 はそれには従い、保健室を出る。 「で?何?」 「伝言・・・承りまして・・・」 「ふぅん・・・何て?」 「『さまは僕のものですよ。誰にも渡しはいたしません』だそうです。」 「・・・何それ?」 カカシは思ったそのままを口にし、怪訝な顔をした。 「そのままの意味、なんじゃないですか?ゴホッ。」 「歪んだ愛・・・だな。」 「人の事言えないでしょう?ゴホ、ゴホ・・・。」 「どーゆう意味?」 「そうゆう・・・ゴホッ。意味です・・・。」 その場に緊迫した空気が流れた。 でも、静かではない。 ハヤテの咳が妙に響く。 カカシはその場にハヤテを置いて机に向かうと引出しから小さな袋を取り出してハヤテに投げ渡すと、ハヤテはそれを受け取って訝しげな表情を浮かべた。 「厄介な体だねぇ・・・ストレスの所為でしょ・・・」 「咳、ですか・・・?ゴホッ。」 「そ。いつ死んでもおかしくないってカンジだね。」 「言い過ぎです。ゴホゴホ。」 「・・・・そんな事あり得ないから冗談として言えるんでしょ?」 「貴方の場合は本当に思えるんでそうゆう冗談止めてくれます?」 「・・・医者じゃない人のコトバは信じないでよ?」 ゾッとする。 最近こうゆう事多いな。とハヤテは思い、次ぎの言葉を飲み込んで溜息として出した。 「いいですけどね・・・苛々収まってからさんを迎えに行ってあげてください?」 「はいはい・・・言われなくてもわかってますよ〜・・・」 ニコニコと、上面だけの笑顔で・・・ ヒラヒラと、手を軽く振りながら追い払う。 ハヤテが咳をしながら保健室を出た後、カカシは大きな溜息をついて机を勢い良く叩く。 ドンッ!というすごい音がして、ハヤテは保健室の方を見やったがそれ以上の音は聞こえなかった。 「やっぱり・・・不安定ですね・・・。ま、昔よりは感情表に出してるみたいですけど・・・あとは、さんが早く気づくことを願うだけですね・・・」 はぁ。と深く溜息を吐いて、ハヤテはそのまま職員室へと向かった。 -------------------------------------------------------- 「カカシ・・・その手の包帯どーしたの?」 さっきまでは無かったはずの右手に巻かれている包帯。 「ん〜・・・ちょっとバカやってね。」 言う気は無いらしい。ニッコリ笑顔で言われればそれ以上を訊く気にはなれなかった。 「ちゃんと消毒した〜?」 「したよー・・・」 「本当?たまーに消毒してない時あるでしょ。ホントに保健室のセンセーなの?って疑うときあるもん」 「あははは。自分の事になると無頓着で・・・」 「カンケーないじゃん。」 「で?したの?」 「してません。」 呆れた。家に帰ったらちゃんと自分の目の前で消毒するように!と念を押した後、は制服から着替えてカカシの部屋を訪ねた。 「今日の夕飯何食べたい?」 「〜vv」 「言うと思った。で?何?」 「最近冷たいね」とカカシは言う。 「甘やかしてばっかじゃ良い子には育たないもの・・・」とは答える。 数時間前にすごく落ち込んでいた人とは思えない。と、は自分でも思っていた。 そして、こんなにすぐに浮上出来るのはカカシのお陰だろう。と感じた。 「アリガト・・・ね。」 素直に、そう言葉に出た。 ビックリしたのはカカシだけではない。 一番驚いてるのはであろう。 「うっわ〜vカワイイ〜vv顔真っ赤〜vv」 そう言いながらおいで、おいでと手招きする。 「〜〜〜〜ッ!!」 は耳まで真っ赤にして、カカシを見る。 来るまでずっと手招きしていそうな勢いである。 「何・・・よ・・・」 恐る恐るといった感じにカカシに近づきカカシの目の前でペタンと座り込む。 カカシは不自然な、でも何か嬉しそうな笑顔を向けたまま、の腕を掴むと自分の方へと引寄せ抱きしめる。 「いつもいつも、素直じゃなくて良いからさ・・・たまにそうやって言ってくれると嬉しいな・・・大好きだからね・・・vvv」 そう言って頬にチュッ。と音を立てて軽いキスを落とす。 「何す・・・」 「いいじゃないv今日ぐらいvv」 カカシがあまりにも楽しそうに「昼の続きしていい?」等と言うから、も笑顔で鳩尾を食らわす。 「それがなければいいのにねv」 「そう、だね・・・」 立場逆転。 はニッコリ眩しいぐらいの笑顔をカカシに向け、カカシは引きつった笑みを浮かべていた。 「さてと、じゃあ、何作ろうかな〜・・・?」 なんて言いながら、は料理の本を広げる。 カカシはそんなを見ながら、少し曇った笑顔を浮かべていた。 そんな事を、は知る由も無い。 カカシも、きっと気づいていない・・・。 |