それは、多分。 カカシが一番隠して居たかった物なのだろうと悟った・・・ 「何・・・コレ・・・」 見つけたモノは医師免許・・・? 保健医って応急処置が出来ればそれでいいのよね? ならば・・・こうゆうモノって要らないんじゃあ・・・ そう考えて、ジーっとそれから目線を斜め上にある時計に向けるとは慌てて医師免許を元あった場所に直した。 カカシが帰ってくる。 隠していたものを見られた時の、カカシの反応も気にならなくもないがきっと、何かが大きく反転することになる。 よくよく考えてみれば、カカシには医者の友人が多く居た。 あの時診て貰った女医・・・カカシは同僚だと言っていた。 つまりはどこかの大学か何かの医学部の同僚とかいった類のものだったのだろう。 それだからカカシは何も答えなかったし、話を反らしたのだ。 そう考えていけば全てに納得いく。 しかし、それだとなぜ、親に勘当されただとか、なぜそこから逃げて今保健医といった事をしているのかなどが全く分からない。 ハヤテはカカシが精神的に壊れてしまったことがあると言った。 つまりは、それに関係することなのだ。 だったら、証拠ともいえる医師免許を取り出してきて『これはどうゆうことだ?』とカカシを問い質してしまうなんて事は出来ない。 きっと、そうすれば、ハヤテが避けようとしている事が現実となり得るだろうから・・・ そう考えて、はひとつ、深呼吸するとカカシを待つ。 「〜?どーしたの?」 夕食時。 余程、様子がおかしかったのだろう。 俯いて少し落ち込んでいるの目の前で手をヒラヒラと振り、カカシはの顔を覗き込む。 「へ・・・?あ・・・いや、何でもないです。」 明らかに何でもないことは無いのだが、が必死になって隠そうとするので、カカシはいつもの眠たげな表情のまま「あ、そう・・・それなら、イインダケド・・・」と納得いかない事を露にしながら諦める。 (何それ・・・大体アンタの事でこっちは悩んでんのよっ!!) そう心の中でボヤいたって、当の本人はそんなこと知る由も無く、が作った夕食を美味しそうに食べている。 「ねぇ、カカシはさ・・・」 「ん?」 「今の仕事・・・やりたくてなったの?」 何を聞いているのだろう・・・と自分でも思う。 が、誤魔化すには最適な条件下に居る事もあって、少し気が楽である。 「そう、だねぇ・・・どっちでもナイって答えが一番妥当かな。」 「はぁ・・・?」 は思っても見ない言葉に思わず呆れた。 「元からなりたかったわけじゃないよ。止む終えず、でも。成りたくて・・・かな。」 益々ワケが分からなくなる。 誤魔化そうとしているわけではないのは分かるのだが、やはり、何か・・・隠しているのか確りとした意味は通じてこない。 「意味、分かんないよ・・・それは・・・その・・・過去に何かあったから今の仕事に就いてるわけ?」 「・・・・何?・・・誰かから何か訊いた?」 ここまで突っ込んだ事を訊いてくるからか、カカシはいつもより少しキツめの眼差しを向けてくる。 「そ、そうゆうワケじゃないんだけど・・・」 焦ってそう言う。 確かに、誰かに何かを聞いたわけじゃない。 それよりももっと核心に近づくものを見つけてしまっただけ・・・ 「そうゆうワケじゃないけど、何?」 カカシも引き下がる気はないらしく、箸を置いて真っ直ぐに向き直る。 しかし、は自分が聞きたくない。という理由と、カカシの為という建前とも思える気持ちで言う気は無かった。 「何が・・・言いたいの?」 真剣に聞いてくるカカシに、はどう答えていいか分からない。 (大体・・・なんで悩むのが私なのよ!!)という気さえしてくる。 と、言うより、実際にそうなのだが・・・・ タイミング良く、カカシの家の電話が鳴った。 話を反らすにはこれほどのチャンスは無い!と思ったはカカシに出るように促す。 しかし、カカシとしてはここで電話に出てしまってはから聞き出すチャンスを逃すわけで・・・ 「大丈夫。ほっとけば留守電に変わるから・・・」 と笑顔を向けた。 (ちょっと待て・・・いつの間に!?) とも、思ったが、用意周到なカカシの事。 と家に居る時は大事な用事でもなければ電話に出る気なんて全く無いのだ。 つまり、チャンスを逃すような事は出来ないようにしてあるのだ。 がどう逃げようか・・・と必死に悩んでる最中、電話は留守電へと繋がる。 しかし、神はに味方した。 電話の相手はハヤテだったのだ。 言わずとも、ハヤテならカカシがしそうな事ぐらい分かるわけで、居留守を使っていることはお見通し。 「カ〜カ〜シ〜さ〜ん〜!!?」 怒気を含んだ低い声にはパッと顔を明るくすると受話器を持ち上げる。 「ハヤテ先生!今すぐカカシに変わりますね〜vv」 嬉しそうにそう伝えると受話器をカカシへと向ける。 「・・・・」 「ほらっ!!電話!」 「あの、ねぇ・・・」 溜息をつき、カカシはから受話器を受け取る。 「ハヤテもさぁ・・・こーんな時に電話して来ないでヨ」 『知りませんよ。そんな事・・・』 受話器からハヤテの声が漏れる。 それを聞いては安著の息を漏らし、ツイツイとカカシの服の袖を掴む。 カカシはそれに気付き、ハヤテと話しながらの方へと視線を向ける。 『後でかわってね。』と口パクで伝えるとは食べ終わった食器を片付け始めた。 カカシは話し終わったのか、流し台の前で食器を洗っているの方へと来ると、「終わったよ」と言った。 「じゃあ、コレ・・・お願いねv」 片付けの途中の食器を指差し、は笑顔でそう言うとカカシが何か言いかけたのを無視して電話のある方へとさっさと言ってしまった。 「なんなんだ・・・?」と呟くカカシを背中で感じていたが、とにかくそれを確り気に止めて置いておく程の余裕は無かった。 「ハヤテ先生・・・」 『また、カカシさんが何かしたんですか?』 心配そうなハヤテの声には苦笑すると「イイエ・・・それとはまたちょっと違うかもしれません」と答えた。 「あの・・・私、見ちゃいけないもの見た気がするんです・・・」 が困惑している事が声から直で伺える。 「多分、カカシが必死に隠している事か、それに繋がる事だと思うんですけど・・・保険医になるのに『医師免許』なんて・・・・要りません・・・よね?」 確認するかのごとく訊くにハヤテはしばらく無言だった。 『・・・・・・・隣にカカシさん、居ないんですか?』 「え?あぁ・・・水音で聞こえてないとは思いますけど?」 『・・・・そう、ですか・・・・・・ 私から言える事はひとつなんですが、多分でもなく、カカシさんが隠そうとしているのはそこですよ。 その理由までは言えませんが・・・言いましたよね?一度精神的に壊れた事のある人だと・・・』 「はい・・・」 『それを見つけたこと自体はきっと言っても大丈夫です。多分、誤魔化すでしょうしね・・・』 「問い質したり・・・はしない方がいいですよね?」 『え・・・?えぇ、まぁ・・・』 「分かりました!スイマセン。有難うございました!!」 妙に垢抜けたように言うに少しの不信感を抱いたが、ハヤテは「では、おやすみなさい」と挨拶すると、受話器を置いた。 「・・・・??」 カカシはいつのまにか気配を消して後ろで佇んでいたを見て恐る恐る声を掛ける。 「訊きたい事があるの・・・だけど、答えなくても・・・いいから・・・」 静かにそう言うと、はジッ・・・とカカシの目を見つめた。 一瞬、緊迫した空気が流れた。 「私ね、見ちゃったの・・・・」 「何を・・・?」 「保健医になるのにさぁ・・・『医師免許』って要らないよね?」 思っていたよりもサラッと訊けた。 内心、緊張で立っているのも疲れる気がしたけれど、そうでもない。 少し、余裕があった。 でも、そう思い込んでいるだけかも知れなかった。 その余裕さえも無くて、それ以上に緊張しすぎて、何も・・・分からないような気もしていた。 「そうだねぇ、治療はしちゃいけないからね・・・で、見たモノってソレなんだ?」 「そう・・・」 「で、ハヤテに相談したわけね。」 「そうだよ。」 ハヤテが言った通り、誤魔化す気なのかもしれないがサラッと返して来るカカシにには余計な緊張が走っていた。 「私に紹介したあの女医さん・・・同僚だって言ってたけど、医学部か何かの同僚だったの?」 「ん?あー・・・アイツは、そうだね・・・・」 「・・・・・?何で、そんなサラッと答えてるの・・・?」 不審に思った。 今まで隠そうとして来た事だったはずなのに、どうしてこんなに自分の事を言えているのか。 普通なら戸惑うとか何とかしそうなものなのにも関わらず平然としている。 「あ〜・・・そう、思う?」 「うん・・・カカシ、もしかして壊れちゃったの?」 「・・・・そうかもね」 カカシは小さく笑うとの頭に手をやる。 「もうそろそろ・・・話したいのかもしれない・・・・」 「・・・・?」 「自由に・・・なりたいのかも・・・・」 その言葉こそ、カカシが一番求めてきたものだった。 にはまだ、分からない事ばかりでその言葉の意味が計り知れなかったが、何かまた違ったものが壊れたか、外れたかは分かった。 しかしそれが良い方向へ向かうものか、悪い方向へ向かうものかは分からなかった・・・・ |