予感は的中。
それが良い物であればこの人を心配させずに済んだのに・・・

虚ろな目でカカシに目をやるの頭をポンポンッと慰めるように叩き顔を覗き込んでくるカカシ。
そのままギュッっと強く抱きしめられる。
「今日は泣かなくていいの?」
「・・・・泣いてばっかじゃいられないもん・・・」
精一杯の強がりをこんな所で見せなくても、と、思うがそれはやはり無理らしい。
『泣くものか』と強い意思の見える眼差しがカカシを見ている。
「うん・・・向上心をもつことは悪いことじゃない。でも、今見せる時なのかなぁ?」
「違っても・・・カカシに弱い所ばっか見られるのが嫌なの!」
かなり恥ずかしいことを言った・・・と後から気付いたのかは顔を真っ赤にさせた。
それにわざと気付かない不利をするのはカカシの優しさなのだろがにとってそれが一番の屈辱になっている。
まだからかわれた方が誤魔化すこともできるのにそれをさせてはくれない。
「俺は・・・の全てを見たいけどねぇ・・・」
その一言に更に耳まで赤くしては俯く。
そんな事を唐突に言われれば恥ずかしさとそれを超えた嬉しさで言葉が発せられなくなる。
「ねぇ、v」
少しの沈黙の後、カカシが発したその声音は先程の真剣さを少しも帯びておらず、なぜか楽しそうに感じられてはまだ赤味の引かない顔でカカシを見上げる。
「まだ先・・・夏休みが終わる頃のことなんだけどね?旅行しない?」
「・・・・へ?旅行?」
その言葉、聞いた事も無いとでも言うかのような驚いた表情を見せるにカカシの方が驚く。
「何?駄目なの?旅行・・・」
「ど、どこに・・・?」
学校の修学旅行でさえ行かなかったに大きな不安と少しの期待が入り混じる。
「温泉〜v行き先はまだ秘密v絶対気に入るよv」
「ちょ、待ってよ!!」
行くと了解した覚えもないし、温泉はマズイ・・・。
「だーいじょうぶ!心配ないって!その場所ね・・・ちょ〜っとばかし有名でね。絶対貸切状態だからvね?行こっv」
かなり楽しそうで絶対に無理に引っ張ってでも連れて行きそうなカカシに溜息を吐く。
「嫌だ・・・」
心にも無いことを・・・と自分でも思う。
それをカカシは知ってか知らずか未だ冗談めかした言葉ぶりで「何で?」と訊く。
「そ、それって・・・ふ・・・」
二人きりなの?そう問おうとしているのがの態度ですぐ解る。
「もちろんv二人きりでvv」
の言葉を遮り人差し指を立て、おもいっきり楽しそうに言うカカシに赤くなる。
「なーんて、それなら良かったんだけど今回はハヤテも一緒・・・」
思いっきり残念そうなカカシ。
(さっきから百面相だな・・・この男・・・)
が安著の溜息を漏らすのを見て、カカシはそのまま続ける。
「良かったね。貞操守れて・・・」
顔にはあからさまに『面白くない』と太字で書いてある。
「って言うか二人きりだったら狙ってたの!!?」
思わず頷きかけたを見てカカシは笑う。
「いいじゃんvそのうち奪われるんだからv」
「奪われるかッ!!」
「あ。ソレ、問題発言・・・」
「〜〜〜〜ッ!奪われてもアンタじゃないっ!」
「俺だよ・・・」
「はぁ?何馬鹿言って・・・」
そのままの言葉は失われる。
カカシの真剣そのものな表情は偶に恐いときがある。
今はまさにそれだった。
「俺だよ・・・だって、俺、誰にもやる気ないもん・・・」
真剣な顔。
静かな声。
表情は穏やかなのにその奥にある瞳を直視できない。
なにか、解らない圧迫感を覚える。
「・・・私は・・・カカシのモノじゃない・・・よ・・・?」
それでも不安を打ち消すために言葉を発し、抵抗の為に目を逸らさない。
「今はね・・・そのうち俺のモノだよv」
ニコッと冗談めかして笑うカカシに息を呑む。
(やっぱり・・・何考えてるのか解らない―――)
「あれ・・・雨・・・少し収まったみたいだね」
最初の勢いが嘘のように静かにシトシトと雨音を鳴らす周りの音を初めて耳にしたかのような錯覚を覚える。
(そうか・・・雨が降ってたんだ・・・)
そんな事すら忘れていた・・・?
「温泉v行こうねーv」
真剣な顔をすると思えば歳を疑いたくなる程の笑顔を向けるカカシには参る。
「分かった・・・よ・・・行く・・・」
渋々といった感じで頷いたに満足そうな笑顔を向けるとカカシは敷いた布団に無理矢理を押し倒し布団を被せるとカカシも横たわり小さな子供を寝かしつけるようにポンポンと布団の上を叩く
「一人だと寝れないでしょ?寝るまで隣に居てあげるね〜v」
と押し付けるように言い、断わる事の出来ない笑顔を向けてくる。
(あんたが横に居た方が寝れない・・・)は紅くなった頬を隠すように布団を深く被った。
「ありがとう・・・」
今は素直に感謝の言葉を述べていよう。
カカシに従っていればきっと要らぬ不安は忘れられるから・・・

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電車で2時間バスで小1時間・・・。
着いたのは辺りに見えるのが木ばかりの森の中・・・?
「成る程・・・ちょとばかし有名っていうのは人が来ない。でなのね・・・」
「そゆ事v」
来ない。と言うより来れない・・・かなぁ?と思いつつ古ぼけた旅館を眺める。
一人はしゃぐの後ろでハヤテはニコニコと満足げにを見ているカカシを見て何とも言えない表情を見せていた。
「何?その顔・・・『このまま放っておいていいのだろうか?』って感じ?」
クスクスと何が楽しいんだか笑うカカシに歯車がギチギチと音をたてて壊れ始めたのがハヤテには分かっていた。
「繰り返す気・・・なんですね。」
ボソッと呟いたその言葉にカカシはピクリと反応した。
「言っただろ?繰り返す気は・・・」
言葉の途中で行き詰まる。
『繰り返す気』はない。確かにそうなのだけども「もしかして繰り返している・・・?」とそう思わないでもなかった。
が気付かれかけているあの事が頭を過ぎる。
そろそろ立ち向かっていかなくてはならない事も分かる。
これまで通ってきた道をひっくり返されて、何もかもが無意味に思えて・・・
何に関しても興味を持たなかったその時に気になったのが
それでまた道を見つけた。
もう二度と繰り返したくはないのに・・・

「カカシもハヤテ先生も・・・何考えてんだかわかんない。
大体旅行に誘ったのは向こうだろ?なんで勝手に険悪になって私を無視してんの?」
ブツブツと呟くに気付いたのかカカシが頭を小突いてくる。
「何?気に入らない?」
「んあ?何が・・・?」
「・・・無理矢理連れて来たみたいなもんだから嫌がってるのかと・・・」
(そんなわけないじゃん・・・)とは思い、それを口には出さない。
いつもはそうだけどこの険悪なムードの中このままでいるのは心許ない。
「そんな事ないよ?だってこうゆう所来たの初めてだもん。ありがとねッv」
と笑顔を向ける。
驚いた表情を見せるカカシとハヤテには急に恥ずかしさが込上げる。
その後に見せるであろう嬉しそうなカカシの顔を見たくなくてフイッと顔を背けた後で真っ赤になった。
それがバレバレなのだろう。
カカシは後ろでクスクスと笑う。
「ほんっと可愛いんだから・・・」
カカシの呟きを無理矢理聞き流して大きく息を吸い込むと、はまだ赤みが引き切っていない表情で「これからどうするの?」と話をおもいっきり翻した。
「んーっとね。」笑いながらの話にのってくるカカシをハヤテは心底呆れた様子で見ていた。

辺りに観光スポットらしき物はなく、する事といったらのんびりくつろぐ事や散歩をしに行くぐらい。
それでもは大満足だった。
「それでもお風呂は嫌〜っ!」
しかし、最終的には駄々を捏ねる事になる。
出来る事なら楽しんで終りたいがそうもいかない。
これは理屈じゃなく嫌なのだ。
「誰も居なくっても嫌だ!!」
「じゃあ、一緒に入ろう。」
「死んでも嫌だよッ!!」
「じゃあ、入っといで」
「嫌、嫌、嫌、嫌ーー!!!」
先程からこの会話を繰り返しているとカカシには溜息しか出ない。
「じゃあ、私は先に行きますから・・・さっさと話に決着つけて下さいね。」
もぅ、関わる事を止めたハヤテは溜息吐きつつ部屋を出て、一人で風呂に浸かりに行くことにした。

「ほんっと・・・あの人は何考えてるんでしょうねぇ・・・」
ハヤテはひとりごちた。
ここへ来てから溜息と独り言しか口から出していない気がする。
ハヤテにとって今が一番静かで過ごしやすい時間であるのにも関わらず土足でハヤテの頭の中を駆け回っている感じだ。
「迷惑極まりないですね・・・」
それでも見捨てずにいるハヤテは凄過ぎである。


「ほらぁーハヤテも呆れて先に行っちゃったよ?」
「アンタに呆れたんでしょ?」
「どっちかというともう関わりたくないんだろうねぇ・・・」
「へ?」
「いや、こっちの話・・・」
二人になると気に掛かる言葉を発するカカシ。
言いたい事があるのだろうが、ハッキリ言って言えないのだろう。
言いたくても言えない。だから気付かせようって魂胆が無意識に働いているのだろうがそんな事気付ける筈がない。
大切な事を知らないのだ。
これで気付けて、理解が出来るやつなんてそうは居ない。
「ほら、風呂は入りに行こ・・・?今が嫌だったら後でさ・・・一緒に入ろうよ。」
「ってーか、さっきからアンタは・・・只単に一緒に入りたいだけなんだろうが・・・・」
この程度のセクハラには慣れきってしまったはその言葉をサラリと退ける。
恥ずかしがって頬を染めればからかわれるどころでなく、一気に押し込まれるのも分かっているからそれは流してしまった方がいいのだ。
(こんな事ばっか教わってても何もならないんだけどな・・・)
「嫌だよ・・・何があっても絶対にこの傷だらけの体は誰にも見せない!!」
意味のない意気込みを見せて言うと「無理でしょ・・・」と一刀両断されペロッと袖を捲られた。
「これだけじゃないんだっけ?傷って・・・」
と言いながらの腕の傷跡をなぞる。
何度も何度も傷つけられて消える事がなくなってしまった傷跡を、ろくに手当ても出来なかったであろう軌跡をなぞる。
その指先をじっと目で追うだけのにカカシは何も言わない。
「体中にあるよ・・・いっぱいって訳じゃないけど・・・でも・・・」
「心の傷の方が大きいよねぇ・・・こんなになるまでやられたら・・・」
「・・・・カカシ?」
愛しそうに、でもどこか恐怖を覚えるのは何故だろう・・・。
「も・・・いい。一人で入る。」
バッと腕を振り上げて袖を伸ばす。
黙ったまま俯くにカカシは声を掛ける。
「ひとつ訊いていい?」
「・・・何?」
「俺に傷見られるの嫌がらないよね・・・。でもなんで隠すの?夏、暑いでしょ?長袖じゃ・・・」
「・・・え?」
「家に居る時ぐらい半袖で居ればいいのに・・・」
は今まで自ら肌を見せる事はなかった。
何故かを知っている。
傷も見られた事がある。
それを嫌だとは思わない。
カカシだからといって見せる訳にはいかない。というわけでも無い。
「なんとなく・・・・」
曖昧に答えたその答えに何か寂しさを感じたカカシだったが、これ以上追求できる位置に居ない事に気付かされ、グッと言葉を飲み込む。

いつもそう。
が学校で先生や生徒に対する壁とは別の大きな壁を感じる。
それを崩すのは簡単。
『自分を見せればいい』

「そんな事・・・出来たら苦労しない、か・・・」
カカシは溜息と共にその言葉を発した。
























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