あれから・・・カカシは何も話そうとはしなかった。



「結局、何も言わないんですよね・・・」
「はぁ・・・」


専ら相談相手がハヤテというのも何だか可笑しいと思うようになってきていた。
まぁ、相談する相手なんて他に居ないのだからしょうがないのだが。

ハヤテはの愚痴とも言えよう話をただ聞いてくれて、偶にアドバイスをしてくれて・・・
毎回、最後には「こんな事言ってごめんなさい」と謝ってしまうほどだった。


「いえ・・・私は別に迷惑なんてしてませんから大丈夫ですよ。それに、少し嬉しいですから・・・」


小さく微笑んで言われ、はドキッとしてしまう。
ハヤテが笑うのを見た事が無いわけではないのだが、こんな綺麗に笑う人だっただろうか?という感覚だ。


さん、自分で気付いてらっしゃいますか?」
「えっ・・・?」
「私だけでなく、ちゃんと・・・人の顔を真っ直ぐ見て話せるようになってるんですよ?」


あぁ、成る程。と思った。
だから、ハヤテの笑顔にも新鮮味を感じたのだ。


「以前がどんなだったか分からないんですよね・・・内面的なトコロでハッキリとした変化が無いんですよ・・・全然」


苦笑いを見せ言うと、ハヤテは「そうですねぇ〜・・・」と少し考える。


「以前は、目が合っても数秒。でしたね・・・あぁ、人を避けてるんだなって感がありましたから・・・」
「な、なんか・・・それって初対面の人とかに失礼なんじゃ・・・」
「う〜ん・・・気付きはしないんじゃないですか?付き合っていく上で気付くと思いますけど」
「それって・・・やっぱカカシのお陰なのかなぁ?」
「なんじゃないですか?」
「そっか・・・」
「・・・?」


少し、悲しくなってしまった。
自分はこんなにもカカシに助けられているのに自分は何も出来ないで居る。
「話したいのかもしれない」と、言われはしたが話してもらっては居ない。

ほんとにあと一歩のところまで来ているのだ。
ここで事を急かしてはいけないのかもしれないし、聞いて切欠を作らないのかもしれない。
どっちにしろ自分の決断によって全てが変わってくるのだ。


「ハヤテさん・・・」
「はい・・・」
「ずっと、聞きたかったんですけど」
「・・・はい」
「カブト・・・さん・・・何か、言いましたよね・・・ハヤテさんにか、もしくは・・・カカシに・・・」


出てくるはずの無い場所で出た名前に驚いた表情を見せたハヤテを見ては慌てる。


「ごっ、ごめんなさいっ!あの・・・私、カカシに何も出来ないから・・・だから・・・考えてばっかじゃいけないって思って・・・それで・・・カカシばっかりじゃなくて・・・そろそろ自分の事にも決着つけなきゃいけないなって思ったんです。
私の知らない所で何かあるのって怖くて・・・特にあの人は・・・何するかわからないから・・・」


捲くし立てるように言って、真っ赤になる。
自分でも何を言っているのか分からない。
ただ、本当に・・・カカシだけに何かを求めるのではなく自分からも立ち向かっていかなくてはと思ったのだ。


「カカシさんへの伝言なんですけどね・・・さんは自分のものだとおっしゃってました」
「え・・・」
「多分ではないんでしょうけど私にも言ったんでしょうね」
「・・・・」


“自分のもの”
あれだけ自分を苦しめておいてそれが一体何を示すのか、には全く分からなかった。
いや、分かっていたとしても分かりたくもないと拒絶してしまっている場合がある。


「ぁあっ!なーにやってんの、二人して!」


暗く沈み、何かを考えていたを心配そうに見ていたハヤテはカカシのその声に一瞬、顔を曇らせてキッと睨んだ。


「何だよ、ハヤテ〜文句でもあるわけ?」
「えぇ、大アリですよ」


キッパリと言い切ったハヤテにカカシは「冷たいねぇ〜」と頭をかく。


「で?何してたわけ?」


底に何かため込んだような裏のある笑顔で訊くカカシ。
今更だがの前で混沌とした嫉妬心を表に確り出してくるガキさというか独占欲の塊というかを見せ付けられてハヤテは呆れる。

「イエ・・・別に」と答えるハヤテにカカシは「ふぅん」と冷たい目を見せを見やる。


、帰ろっか?」
「えっ・・・?」
「もう6時だよ〜?お腹空いた」
「・・・一人で帰って自分で何か作れば?」
「え〜っ!のごはんが食べたいのに!」
「くそっ・・・この駄々っ子化!何とかしてくれません!?」


突如降って掛かった災難にハヤテは苦笑し「無理ですね」と答える。
は「やっぱり・・・」と肩を落として半ば強引にカカシに引きづられながら「さようなら」と挨拶し、ハヤテはそれを笑顔で見置くった。


「駄々っ子化・・・ねぇ・・・」


それはの暗く落ち込んだ考え方を吹っ飛ばす為か、はたまた自分を隠す為のものか・・・


「もしかしたら、両方かもしれませんね・・・」


ハヤテは深く溜息をついて職員室へと戻って行った。

































「ねぇ、カカシ・・・?」
「ん〜?」


それは、夕食時の事。


「私ね、一回・・・家戻るわ」
「・・・はぁ!?」


素っ頓狂な声を上げるカカシには「何よ?」と膨れっ面を見せる。
こんなマヌケな顔をするのも無理はないだろうとは自分でも思っていたが、ここまで予想通りの反応を返されてもその後の自分の反応を考えていなかった為にその場は一瞬静かになる。


「何で!?」
「何でって言われても・・・」
「つか、帰ったらヤバイんじゃ・・・」
「大丈夫よ、あの人達が帰ってくるから自分も帰るんだし・・・何かあったらカカシ、助けてくれるんでしょう?」
「あのねぇ・・・助けるけどもしもって事も・・・」


はフッ・・・と笑みを作って「大丈夫」だとカカシの言葉を遮った。


「私はカカシを信じてるもの・・・もし、何か合っても前みたいには戻らないから・・・」


心の中に誰かが居れば、何があっても大丈夫だと、
そんな気がするから決心した事だった。


「ね?良いよね?」
「・・・・・・」


待ってるだけじゃ駄目だった。
自分から行動しないといけなかった。

それならまず、他人事より自分の事を解決する方が先なのではないかと思ったのだ。

カカシはあと一歩の所まできている。
なら、自分も・・・
自分も動き出さなければいけないのだと気付かされた。


「分かった・・・けど、毎日連絡入れろよ」
「ハイハイ、心配性」
「あのねぇ!あんな危険地帯・・・っ!」
「あの人たちが居る間は大丈夫だって!ただ、送り迎えはしてね?じゃないとカブトさんがそれしちゃうから・・・」
「ん。了解」


それでもまだ、家へと帰す事をあまり良いと思っていないカカシには「ありがとう」と小さく微笑み、カカシは「どういたしまして」と溜息を吐いた。




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